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子育てテクノロジー
保育はナイチンゲール以前
子育て中の親が、3歳までの子どもに対して実施した声がけが子どもの脳の発達に決定的な影響を与えることを述べた「Thirty Million Words: Building a Child’s Brain」という本がある。この本を「3000万語の格差」というタイトルで和訳し、さらに日本の現状と課題を記した、あたかも本が一冊増えてしまったかと思われるほど濃密で長大な日本版解説を書かれた高山静子先生にお会いしたことがある。高山先生はこの翻訳のみならず、保育の専門性に関わる極めて多くの著書があり、他の保育系研究者と同様、純粋で真摯な情熱を持って研究に取り組まれている。高山先生からは、保育のプロの立場から数々の興味深いお話を伺うことができたが、その中で私に最も刺さった言葉は「保育はナイチンゲール以前」というものであった。つまり、医療分野においてはナイチンゲールが統計学や可視化などのテクノロジーを現場活動に適用することによりそのパフォーマンスを飛躍的に向上させ、近代的な情報伝達システムの必要性まで広く知らしめたが、保育においてはこれと比肩しうるような科学的手法が十分に適用されておらず、今もって直感と経験に基づいた、非効率的な実践が行われているということなのである。