乳幼児の手指の巧緻性は、子どもの発達の観点から欠かすことのできない要素です。しかし、子どもの手指の動作を定量化するツールはあまり多くありません。そこで私たちは、子ども用データグローブを開発しています。

開発中のグローブ

子ども用データグローブの要件として、以下を考えています。

  • 安全であること
  • 着脱が簡単であること
  • 子どもの手のサイズにフィットすること

まず安全性については、回路全体を布の袋で包み、基盤などの尖った部分が手に触れないようにしました。着脱は簡単とまではいかないのですが、第一関節部分に装着したゴムバンドの中心に指を差し込むことで取り付けることができます。回路やセンサーは子ども用のアレルギー対応手袋の中に入れてあるので、子どもの手のサイズにフィットします。

内部に含まれる回路です。これはZigBee無線を用いたワイヤレス版ですが、Wi-Fiとも干渉し安定性に難があるため有線版もあります。

データの可視化

指の動作の様子を判断する可視化手法も開発しています。

このツールは、あるタイミングで指が曲がっている度合いを画面上のグラフで表示しており、左右の領域は、指の曲がり度合いの履歴を分析した結果を表示しているものです。

左の図は、画面左側を拡大したものです。上の5×5のマトリクスは指の間の動きの類似性を表示しています(ピアソン相関行列)。これは左手の情報なので、右から左へ親指、人差し指…小指となり、上から下方向も同様に親指、人差し指…小指となっています。赤色が濃いほど、動きの類似性が高いことになります。

これは、発達初期は全ての指を同じように握り、開く状態から、段々に指ごとに別々の動きができるようになることを可視化できます。つまり、全体に同じ色であればそれは発達初期であり、色にムラができてくると発達が進んでいることになります。

下に横方向5つ並んだ四角は、各指がどれくらい動いたかの目安です。さまざまな角度が現れる指ほど、濃い色になります。


これは左手の例ですので、右手であれば左右に折り返した表示となります。

データからわかること

この可視化を用いると、子どもの違いによる指の使い方の違いを見ることができます。

上の図では被験者Aは左手の方を細かく使っていることがわかります。Bも左手優位ですが、右手も若干使っているようです。Cは右手だけで、左手はほとんど使っていません。
これは、編んでいる様子を見るとよくわかります。右の写真は被験者Cが三つ編みをしているところです。左手で2本の紐を固定し、右手では残り1本を引っ張ったり、左手の2本に合わせたりして細かく操作しています。
これには利き手が影響しているのかもしれませんが、未調査です。

また、扱っているものの違いもわかります。

この二つ目の例は、穴を開けたボール紙に毛糸を通すというものです。これはクリスマス用の飾りとして使うことができます。
こちらの例では、被験者による差があまりなく、皆両手を同程度用いているようです。

ただし、紐をつまんで操作するという動作は共通のもののためか、薬指と小指の連動が大きいという点は同じようにも見受けられます。

現在は可視化を通じた感覚的な差しか評価していませんので、今後はそれを定量評価することが目標です。
また、装着感には未だ難があり、活動によっては使いづらそうな面もありました。ここも将来課題です。

実験環境

本研究の実証実験には、以下の方々のご協力をいただきました。

  • アイン保育園グループ プロジェクトマネージャー 岡田 鉄平氏
  • アイン三枚町園 高橋 美恵 園長 他 保育士の皆様
  • アインフェスにお越しくださった、アイン保育園園児のご家族様

心より感謝申し上げます。

Publications

S.Owada, H.Sugimura, M.Isshiki, “Toddler’s Hand Motion Acquisition with Hand-Made Data Glove”, The 2022 IEEE 4th Global Conference on Life Sciences and Technologies (LifeTech 2022), Japan, 2022