子どもが長時間を過ごす保育現場では、さまざまな素晴らしいこと、美しいこと、驚くようなことが起こっていますが、同時に多くの課題があることも事実です。

私たちは、こういった現場について、良いこともそうでないことも、多様な立場や背景・スキルを持った人、異なった観点を持つ人と共有し、共に楽しむとともに、課題解決に取り組んでいきたいと思っています。

一方で、保育室は生まれたばかりの人間を育むデリケートな場であり、見慣れない人物が不用意に現れることで、子どもが緊張・興奮し、普段とは違う振る舞いが起こってしまうこともあります。こうなると、子どもの発達や保育活動に支障をきたすのみならず、多様な人々が普段の保育活動を観察し、考えるという目的も果たすことができなくなります。また、プライバシーの問題も、当事者のみならず保護者にも関わるという性質上、シビアに解決しなければいけないという難しさもあります。

そこで私たちは、東京工業大学 中谷先生らとともに、バーチャルリアリティ技術を用い、遠隔地や時差がある環境からも仮想的に保育室に入り込み、現場の様子を観察・体験できるようにしたいと考えています。また、その空間内で当事者や他の仮装入室者などと話し合い、現場改善について知恵を捻ることができる、保育メタバースを構築したいと考えています。

保育メタバースは保育園デジタルツイン(現実そっくりの環境をコンピュータ内に仮装的に再現したもの)とコミュニケーションプラットフォームからなり、要素技術として三次元カメラ、行動認識AI、センサーシステム、保育士の主観情報入力のためのスマホアプリ、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)などを用いています。これらは、要素としてはこれまでも存在していたものですが、これを統合し、保育環境のメタバース化が実現される意義は小さくないと考えています。


2023年3月に実施された保育メタバースワークショップの様子

本プロジェクトは2022年度からの国立研究開発法人 科学技術振興機構 (JST) 未来社会創造事業 次世代情報社会の実現領域 探索研究 「ケア現場の当事者と専門家の共創を可能にする メタバースプラットフォームの実現」( 研究代表者:中谷桃子)として採択され、現在アクティブに研究が進められています。

保育メタバース関連活動

ワークショップ以外にも、様々なイベントを開催しています。

いくつかのメタバースワールドは公開しており、Clusterというメタバースプラットフォームから体験することが可能です。以下の画像をクリックすると、Clusterのページに飛びます。




関連した研究論文

“VisRef: A Reflection Support System Using Fixed-Point Camera and SmartWatch, Applied to Childcare Fields.” HCII 2023.

Sawako Fujita, Yuki Taoka, Shigeru Owada, Momoko Nakatani, Shigeki Saito. 23-28 July 2023. “Towards Co-Design with Day Care Teachers Based on in-Situ Behavioral Data: A Case Study of a Workshop for Reflection Based on Video Recordings.” In HCI International 2023 (25TH INTERNATIONAL CONFERENCE ON HUMAN-COMPUTER INTERACTION).