2015/1/28-30の日程で東京ビッグサイトにて開催されたENEX2015にて、神奈川工科大学のブースで展示を行いましたので報告します。ENEXには去年も同じ形で参加しましたが、今年はブースのメインの展示部分のアレンジという大役を仰せつかりました。
この展示に向けてEnergy Design Competitionというコンペも開催していて、ブースでは来場者投票による審査を行って頂きました。投票結果はこの記事の最後の方でお知らせします。

背景

スマートハウス界の最近のトレンドとしてはスマートメーターというものがあります。スマートメーターは東京電力管轄では2020年、全国でも2024年までには全世帯(日本の全世帯ですよ!)に導入される電力メーターで、ネット経由でその値にアクセスすることができ、電力会社にも履歴がほぼリアルタイムでアップロードされ、その情報を用いて動的に変動する電力料金などが導入されることになっています。知り合いの家でもいつの間にかスマートメーターに入れ替わっていた、というような話をちらほら聞くようになりました。ネットワーク家電の普及も進んできてはいますがまだまだなので、スマートメーターは最初に全家庭に導入されるネット機器ということで、私も大変気になっています。

経産省資料
※図は経済産業省資料より

そんなわけで、今年はスマートメーター導入率が大幅に高まる、いわばスマートメーター元年とも位置付けられます。しかし、スマートメーターを導入することで、生活の快適度が向上するのか?というと、その点はまだだれもが納得するものにはなっていないようなのです。これは、スマートメーターというものが基本的には「節電に役立つもの」という理解しかされておらず、かつ一般の人はそこまで節電に関心がわいていない、ということがあるのではと思います。

そこで、スマートメーターは役に立つ、様々なアプリを導くことができるものだということを来場者にご理解いただくために、アプリコンテストを開催してアイデアを公募し、来場者に投票して頂くような形にしたいというのがご依頼の内容でした。

正直言ってあまり準備期間がなく、新しい要素も多かったので自分にできる仕事なのか自信がなくお断りしかけたのですが、元々お世話になっていたKAITであり、ご担当の笹川さんが大変な熱意で取り組まれていたこと、そして私にこれまでハッカソン等をいろいろ開催してきた経験を生かせるなら試してみたいという気持ちがあったこと、また、この仕事を通じて新たな出会いや展開が期待できるところから、意を決してお受けすることにしました。


KAIT笹川さん

デモ構成

今回、スマートメーターのデータにアクセスするためのホームゲートウェイとして、NTT西日本/NTTコムウェアが開発・配布している光Box+を用い、この上で特製のKadecotを動作させ、そこから東芝のUSB Wi-SUN通信モジュールを通じてスマートメーターと通信することになりました。この光Box+はとてもコンパクトなAndroid端末で、通電状態で家にずっと置かれることが期待できます。Kadecotはホームサーバーアプリですが、携帯端末にインストールすることで宅外に持ち出される可能性が高いのと、端末が節電モードに入ったりするとパフォーマンスが低下したりするので、宅内でずっと起動しているAndroidがないかずっと探していました。光Box+はこの目的に完全に合致していて、しかも今回試してみたらKadecotもすんなり動かすことができました。この光Box+は最近SMA認証といって、スマートメーター情報を受け取る端末として正式に認定されたので、それを受けての展示になりました。
※ただし、今回の開発はENEX展示向けの一時的なものであり、公開されているNTTグループ等の光Box+戦略に影響を与えるものではありません。

私の役割は、KAITのご意向を汲みつつ展示物を揃えることで、具体的にはコンペの募集やサンプルアプリ・エミュレータの開発と光Box+用Kadecotのプラグイン開発などを行いました。私が作ったエミュレータを置き換えて当日展示される実機を動作するようにする部分は日新システムズの凄腕エンジニアの森さんにお願いし、その部分の動作検証や機器側の要求の整理などはエクスカルの武部さんとCECの山本さんに担当して頂けました。プラグイン開発ではNTTコムウェアのエンジニア服部さんはじめ多くの方のご協力を頂きました。最初はデスマーチを予想していたのですが(笹川さんごめんなさい)、皆さんのご協力や光Box+の完成度もあってむしろ余裕があり、いろんな方とご一緒できてとても楽しく準備を行うことができました。


当日のパネル(下の方に今回のコラボに関する紹介があります)

コンペの実施とサポート体制

コンペの方はデザイナーを中心に応募して頂きたかったのですが、デザイナー向けイベントをやったことがなく悩みに悩んだ結果、以前ロゴ募集をして多数のデザイナーに応募いただけたクラウドソーシングを利用することを思いつきました。というわけでクラウドワークス内でのコンペを開催しました。

また、ネット上でのサポートを行うため、Facebookでもイベントページを作成してQ&Aに備えました。

さらに、デザイナーを対象にする以上プログラミングの負担を極力減らしたかったため、機能としては完全に実装されているがデザインが一切入っていないというサンプルプログラムを作り、連係して動作するエミュレータも作って公開しました。

また、それでもプログラミングの必要性を0にはできなかったので、インターネットアカデミーというWebの専門学校のご協力を頂いて、立ち上げのワークショップとフォローアップを合計三回ほど行いました。ご応募頂く方のモチベーション維持と作品のクオリティ向上に非常に効果があったと思います。

ENEX当日

今回のブースはENEX入り口入ってすぐという絶好のロケーションということもあったせいか、電力会社の方を中心にひっきりなしに多数の方のご来場を頂きました。来場者投票も、ご協力頂いた方にはサンデンの自動販売機から好きな飲み物をもらえるというキャンペーンの効果もあったせいか、300名を超えるご投票をいただけまして、大変盛況な展示になりました。

コンペ結果

コンペの結果、会場では3作品が実動デモ・ビデオ展示、2作品がポスター展示、1作品がビデオ展示となりました。来場者による投票により、受賞作品は以下のようになりました。(以下敬称略)

「smart meter」末﨑正展 (最優秀賞)

「節電時計」塚谷浩司 (優秀賞)

 

「エコクエ」インターネットアカデミー アプリ制作チーム (優秀賞)

「でんきモンスター『もにゅちゃん』」 フクキハル商會 (来場者特別賞)

「E power to E fish.」木下康次 (佳作)

「TiCoS118」 泉田浄視 (佳作)

受賞者の方々には、後日クラウドワークス経由で副賞となる賞金が支払われます。
おめでとうございます!そしてご応募ありがとうございました!

まとめ

本展示は私の中でも初めてのチャレンジで、うまくいくものか大変不安でしたが、なんとか最低ラインはクリアしたのではないかと思っています。またこの仕事を通じて多くの方とコラボすることができ、非常に充実した有意義なプロジェクトでした。
KAIT笹川さんはじめ関係者の方々、コンペにご応募いただいた方々、ご来場・ご投票いただいた方々に心から感謝申し上げます。

そして、私はこれを機会にデザイナーの方々とのリンクを築けないかな…と期待しています。これまで私はハッカソンを中心に活動してきて、そちらではかなりアクティブなグループの形成に寄与できました。

今後はデザイナーとエンジニアのコラボの場を作ることを私のコミュニティ活動のテーマに掲げ、まずはFacebookに作ったグループを育てていけないか、継続的にメンテを行いたいと思っています。

よくよく考えると、どちらかというとエンジニアの側にいる私がデザイナーとコラボするというのは学生時代から多かれ少なかれトライしてきたことですが、これまであまりうまくいっていませんでした。しかし、機器にせよサービスにせよ、機能だけで勝負することが難しくなってきた現在、この種のコラボは社会的にも求められていると思います。

これからも変わらぬご支援、ご鞭撻のほどよろしくお願いします!

最後に、このコンペの苦労話をまとめてみました。2015/2/1に開催された「おうちハック発表会 #2」で発表したものの拡大版です。
あまり本気にとらないでください(笑

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