保育の質に関する議論が高まってきています。

保育の質とは包括的な概念であり、時代背景や文化的差異によって目指す人間像が異なる以上、その具体的な方法論も多様です。しかしながら、保育の質を向上させようと思ったら、現状を客観的に把握し、足りないところを改善していくことが、保育の方法論に関わらず必要です。また、子育てを組織的な枠組みによってサポートする場合、その投資対効果を計算することも重要です。このために、ITERS(ECERS)やCLASS Infantなど、保育の質を定量的に評価するための指標が存在しています。これらの指標は極力個別の価値観によらず、多くの現場評価に使えるようにデザインされています。

これらの指標を用いて現場の環境や活動を評価する方法も様々です。専門の評価員が保育所に出向いてスコアシートを埋めるものもあれば、自己評価を基本とするものもあります。しかし、いずれも人手が介在して評価を行うことを前提としている点は共通しています。そのために手間暇がかかり、主観に左右されたり、観察時間が限られたり、見慣れない観察者によって保育士や子どもの振る舞いが変化するなどといった課題も生じます。

そこで我々は、AIを用いて子育て環境の質を自動評価することを考えています。昨今のAI技術の発展は、人の位置やポーズ、表情などを自動的に認識することに長け、そこから得られる情報を保育の質評価の基本データとして使うことも可能になってきています。さらに、生成AIを用いることで、動画から即、質評価スケールによる自動分析を行うこともできます。

保育の質を量的に自動評価することによって、これまで子育てサービス提供者にとって、あるいは子ども達にとって特別な、非日常のイベントだった保育の質評価が日常のサイクルとなり、毎日の活動を継続的に評価することが可能になり、評価員がその場にいるときだけでなく、子育てのプロセス全容を理解することもできるようになると考えられます。

 

我々は国際的に用いられている質評価指標、特にCLASS Infantの中から機械処理に適したものを選び、カメラやセンサーシステム、AIなどを組み合わせて自動的に計算するシステムの開発に取り組んでいます。

iOSアプリのVisRefからGoogle Driveに動画をアップロードする設定をし、VisRefビューアというクラウドサービスにログインすることで、保育室の動画をAIで分析することができます。その結果はVisRefビューアで閲覧することができます。

AIによる保育の質の自動評価機能は、現在は実証実験にご協力いただいている園にのみ公開しています。

開発・実験協力
大久保わかくさ子ども園

実験協力
リトルグリーンバード とみしろ教室
君津市立 みふねの里保育園
太陽の子 桜台第二保育園
太陽の子 下戸田保育園